1. 夏の蝶

    夏の蝶

    世界は遠く近づく火星の上に約束を咲かせた花真実はいつも嘘みたいに君を包んで閉じられた扉の向こうを想像することはできても、けっして見ることは叶わない彼はいつも未来を探していて、世界はじっと押し黙ったままその様子を窺っている彼女の動揺に差し出された手その手のぬくもりひび割れた約束灯台と蝶ひらひら揺らめく鱗粉と夏の光...

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  2. 遠い夜のさよなら

    喧噪に溜め息ひとつゆらゆらゆれる宝石のような街灯り冷たい指先に微かに伝わる光の温度ショーウインドウに映るまやかしのパレードぼくたちはいつだって触れられないものに焦がれていて落ちて行く輪の中でとても大切な一つの言霊に触れるそれは夢の中のできごとのように憂いと郷愁に満ちて溜め息一つの刹那に泡のように弾けて消える遠いよるのさよならだ...

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  3. 冬天

    噛み付いた夢傷口は空の色溜め息はやがて溶ける雪の色...

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  4. 星空浮遊

    鏡文字の記憶を紐解き笑うあなたの背中にはいつも星空の海が波うっている密やかに煌めく星粒がまぶされた歯車の郷愁を時計師のゆびさきが見立ての良い小箱に収めるとき天鵞絨の天蓋に机上の詮索が弾けて消えた...

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  5. 時間測量

    光は宿るあなたの眼球を採掘して時の流れに鮮やかな色彩を残して記憶は刻まれ世界は揺れる...

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  6. 3月の幻

    あの日、僕たちはどんな色の言葉を話し、どんな時間の重さを感じていたのか? 白いカーテンが時の波に揺れ 、球体の空に染み出してゆく透明な感情が君の頬に灯した青い焦燥。けっして導くことのできなかった言葉が暖かな室内を彷徨い窓硝子に映る僕たちの幻が砕ける。...

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  7. その本

    その本には、猫と過ごしたことのある人ならばわかる、きまぐれと嬉々と陽だまりと悲しい別れが記されていて、過ごした日々の記憶に重なりあった名前がぼんやりと浮かび上がる。ちょうど物語の終わりに差し掛かったとき、彼は肉球の柔らかな感触が足先を撫でていることに気づいた。死はいつも無口、生者はそれに饒舌な意味を与える。...

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  8. 目隠し

    記憶に埋もれたままの夜のバス停で少年は、いつまでも硝子のバスを待っている。...

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  9. 錆びた扉

    すっとはいりこんで浸透して耳がくすぐったい水のやうなやわらかな桃の香りのやうな孤独が満たす夜の駅で空気と液体の混じりあった指先に刺ちくりと刺すちいさな痛みの赤い点ゆっくりと舞い上がる感情の螺旋その方向にあなたの声があって世界の一瞬の揺らめきに目を細めたのがいったい誰だったのか?今はもう思い出せないけれどあのとき錆びた扉を背にして確かにあなたは笑っていた...

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  10. 本当のこと

    ときどき、誰かが嘘をついて、誰かが本当のことを言う。ときどき、嘘が本当になり、本当が嘘になる。ときどき、人は嘘を信じなくてはならなくて、本当のことを嘘だと言い張らなければならないときがある。本当と嘘の間を行ったり来たりして世界は揺れ動き、誰かが誰かを蔑み、誰かが誰かを褒めそやし、君の唇が枯れるまで夜は明けない。...

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  11. 最後の蝶

    真夜中、迷い込んだ異国の街。見ず知らずの美しい女が彼を呼び止め、自らの家の書架へと導き、そこで見覚えのある一冊の本を手渡した。彼が「私も同じものを持っています。」と告げると、彼女はその本を開き、真ん中あたりのページを無言のまま指し示し、小さく微笑んで見せた…そこで、不意に自分の寝室に舞い戻った彼は、今見ていた出来事が夢であった事を知る。記憶にはないけれど、彼女をどこかで見かけた事が現実にもあったの...

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  12. 時間の鍵

    密やかなもの、小さなものに惹かれますたとえば、雨総体としての雨ではなく集合体のなかの小さな個である雨粒のほうにより惹かれます空であると、漂う大きな雲の隙間に消えそうになっている小さな雲砂浜にひとつきらりと光る硝子の破片世界を構成する要素としては極小で、取るに足りないもののようであっても何か心に響く小さくとも意味があるもの耳をくすぐる囁き声水面に無数に揺らめく光のプリズム掌のうえで溶ける小さな雪片す...

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